上高地 徳澤園のブログ

月: 2017年11月

あべこべ

徳澤園を山小屋と呼ぶか旅館と呼ぶか。よく聞かれます。私はどちらの認識でも、来ていただいた方の目的に合うのであればどちらでも構いません。140年以上ここで営業し続けられたのは、山を愛している山人の皆さんです。

ただ、徳沢の難しいのは下界の便利さと山小屋の不便さをどの案配でお客様に提供するか。例えば便利に慣れているからといって、徳澤園の玄関が自動扉になってしまったら恐らくお客様は不満に思うでしょう。
数年前から徳沢は携帯電話が使えるようになりました。山の中の静けさを味わってもらうという理由で、今さら圏外にしてしまったらこれはこれで不満に思うでしょう。

だから、ここでサービス業を行っている以上、山の中の空気感、時代にあった満足感。そしてそのバランスには人一倍気を使います。

混雑時でも、山小屋はお客様を断ることは出来ません。だから、広間で一枚の布団を何人かでシェアするというのは、山小屋はサービス業の前に、避難、安全が第一目的だからです。

畳の広間の相部屋は当園にも昨年までありました。しかし、今シーズンはプライベートスペース重視のお部屋に変わりました。

実は、全ての相部屋をこのようなスタイルに変更するにあたり、もう少しお客様から「広間で雑魚寝の方が山っぽくて良かったのに」と指摘されるのではないかと思って覚悟をしていました。しかし、そのような指摘をされることはありませんでした。

もし10年前にこのようなスタイルに変更していたら、沢山の指摘を受けていたように思います。しかし、2017年の時代はプライベートシェアルームが求められています。

プライベートシェア…。言葉としては、あべこべです…。

しかし、このあべこべ。この曖昧さ。一昔前の流行語であるファジーこそ最近の徳澤園であり、お客様から山小屋なのか旅館なのかを聞かれる元になってると思います。

実は、来年に向けて一部屋だけ改装をします。社長、女将を説得し、当園で一番ハイクラスのお部屋である洋室Bタイプのお部屋を敢えて再度改装します。

ほぼ頭の中では完成しています。イメージ画像は1月中旬にはお見せ出来ると思いますが、一部屋だけ。しかも一番ハイクラスのお部屋ですので、大胆なリニューアルになると思います。

あるお客様に山小屋の好きなところを聞いたとき、とても面白いことを言われました。
「危険な山の中の、安全なお部屋がとても新鮮なの」
この言葉が衝撃的で、ヒントをもらいました。

が、これもあべこべです。

先入観

本年度の営業も終了し下山しました。

今シーズンも沢山のご利用ありがとうございました。

まだ、徳沢では改修工事などしておりまして、雪が降るまで来年の準備を進めています。

来年の予定は2つ。1つは、皆様に気づいてもらえるか分からない屋根の塗り替えです。やったかやらなかったか分からない部分。やっても気づいてもらえない部分が一番お金がかかります。

私の心境としては、我慢。大金をかけても気づいてもらえないけど、やらなきゃならない…。だから、我慢です。成果ばかりにとらわれがちな人間の発想です…。

そして、もうひとつの計画は…。すみません。まだ言えません。こちらは、上高地特有の各行政機関の承認が必要ですのでまだ公表出来ませんが、計画通りに進めば、また新しい山スタイルのお部屋がご提案が出来ると思います。

さて、来週からスタッフたちとキプロス、マルタ島へ研修に行ってきます。

サービス業に携わる者が、サービスを受ける機会を作るというコンセプトの下、今年で5回目の研修になります。

昨今の海外情勢の不安の中、場所選びには一番苦労しました。

安全な国など、日本を含めないと感じる今日。旅行会社さんとも相談し決まったのがマルタ島です。

今まで、何の関わりも、印象もなかった国。イメージも沸かず、どこかミステリーツアーのような今回の研修。

雑念も先入観もない中、他人に決められた旅行に参加する。

もしかしたら、そういう感じで上高地を訪れている人も多いかもしれません。

そんな気持ちを味わう研修になればいいかなということで思いきってキプロス島、マルタ島に決めました。

総勢10名。乗継地は、ドバイ。長い長いフライトです。みんなどんな感想を持つのかとても楽しみです。

下山

10月中旬からずっとぐずついた天気が続き、週末には決まって台風とお天気に悩まされた秋でしたが、今年も無事にシーズンを終わることが出来ました。

ご利用頂きましたお客様には感謝致しますと共に、ぜひ来年もよろしくお願いいたします。

10月末には、半分のスタッフが下山し、本日は残りの半分のスタッフが先ほど下山しました。

残された私と弟と業者さんで最後の締め作業を行っています。

スタッフたちもやり遂げた充実感と下界に戻れるワクワク感でとても清々しく帰って行きました。

誰もいない徳沢を堪能しつつしっかり戸締まりをしてから私たちも下山します。

追伸
来週から今年もスタッフたちと恒例の研修に行ってきます。今年の研修先は、マルタ島。今、何を研修するのかという理由を考えています…。

総勢10名の旅。また、ご報告します。